~「生命」の役割を考える~
イルカ・パヴェルカが唱える、「『生命(いのち)』は奇跡である」を思い出させます。
進化のトリガー
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“生き残るのは最強の種でも最も賢いものでもない。最も変化に適応できる種である。”
進化論の“自然選択説”に関するダーウィンの有名な言葉です。
この宇宙に産み落とされた生命という名の奇跡・・・それがより高い次元の存在になるために必要なのは「進化」。
その「進化」のトリガーは、果たして遺伝子の複写ミスによる“突然変異”だけでしょうか?
人間の身体を形づくる細胞の数は、成人の場合でおよそ60兆個。
しかし、人体に共生している微生物(細菌)の数は100兆個以上。
人体内部に多くの「菌」が存在することは、19世紀パスツールの時代から知られるところとなり、彼は「ヒトが生きていくためには菌が不可欠」と考えました。
仮に体内の共生微生物を一つに集めれば、その重量は約1キログラム。
何と、私たちの身体の中には、牛乳パック一本分(1リットル)もの微生物が潜んでいるのです。
1 「共生」によってもたらされる新たな能力
アカハシウシツツキという鳥がバッファローやスイギュウの身体にまとわりつき、何かを嘴でついばむ光景がよく見られます。
これはバッファローなど大型哺乳類の身体に付いた寄生虫を食べているのです。
ウシツツキは食糧としての寄生虫を得ることができ、バッファローは寄生虫を除去してもらうことで病気から身を守ることができます。
また、突然ウシツツキが飛び立つことで、バッファローは身に迫る危険を察知することも可能になります。
このように、両者が互いにメリットを得られる関係を「相利」型の共生といい、片方にしかメリットがなく一方は損をする「寄生」、一方が得も損もしない「片利」などを含め全て『共生』と呼ばれます。
ところが、人間と体内細菌のように、ある生物の体内に別の生物が取り込まれ、永続的な共生関係となっているケースがあります。
これを「内部共生」といい、実はほとんどの動植物が体内に共生微生物を持っています。
“一昔前には、共生を特殊で変わった現象と捉える人も多かったんですが、今では極めて普遍的なものだと考えられています。
体内に共生微生物がいないと生存できない種が20%、いると性質が変わるものを入れると100%近い。ほとんどの昆虫が共生微生物の影響を受けていると言っても過言ではありません。”
【産業技術総合研究所 深津武馬博士】
面白いものでは、森林や湿地、小川や砂浜に至るまでいたるところに生息するアリガタハネカクシという昆虫がいます。
腕などにとまったハネカクシをうっかり手で払うと体液をかけられ、ひどいミミズ腫れにされるという油断のならないヤツ。
この体液の毒は、ハネカクシ自身が作ったものではなく、その体内にいる共生微生物が生み出したものなのです。
つまり・・・
ハネカクシは、共生微生物のお陰で『攻撃』という“新たな能力”を獲得したと言えるでしょう。
そうした共生微生物の中には、とんでもない振る舞いをするものが存在するようです。
宿主の発生や成長に積極的に関与し、宿主の身体そのものを劇的に変化させてしまう共生微生物が発見されたのです。
2 “男殺し”のならず者~ボルバキア~
キチョウは、古くから日本のどこにでも見られる小さな黄色い蝶ですが、沖縄と種子島に生息するキチョウには、メスだけしか生まない個体群が一定割合いるということが分かりました。
なぜ、そんな現象が起きたのか?
調べてみると、そのメスだけしか生まない個体群の体内には、ボルバキアという菌が共生していました。
ボルバキアに感染すると、オスで生まれるはずだった個体が強制的に性転換させられてしまうのです。
つまり、染色体はオスのままでありながら、卵巣も成熟し、完全なメスの形質・機能を獲得して生まれて来るのです。
もちろん、そうして生まれた性転換メスは他の正常なオスと交尾して子孫を残すことも可能です。
しかし、ボルバキアというのは何と凶悪なヤツでしょう。
強制性転換! うむむむむ・・。
しかもこのボルバキア・・・さらに調べて行くと、実はキチョウばかりでなく、ダンゴムシやヨコエビなどいろいろな昆虫種や甲殻類に取り付いて“オス殺し”をしていることが分かってきたのです。
その方法は「性転換」だけではありません。
テントウムシに感染してオスの卵を全部殺してメスだけを孵化させたり、寄生蜂に感染してメスが交尾せずにメスを生む「単為生殖」を起こさせます。
“オス殺し”のボルバキア~恐るべし!
・・・このボルバキアがなぜこんなことをするのか、その理由はまだ明らかではありません。
でも、そのヒントは次世代宿主への“乗り換え方法”にありそうです。
ボルバキアは宿主の細胞内に生息するのですが、次世代に乗り換えるためには、メスの卵が形成される過程でその内部に潜り込みます。
・・・オスの精子にはそもそも“入り込む隙”がないのですね。
※つまり、オスに取り付いてしまったボルバキアは子孫を残せないということ。
単純に考えれば、宿主の「オス」を殺し続ければ生殖行為自体がなされなくなります。
宿主とともに自滅するしかありません。
ところがボルバキアの場合、「単為生殖」という切り札を持っているのでノープロブレムというわけです。
このように、細胞内共生細菌ボルバキアは、宿主の“性の決定”という高次の生命現象に関与し、大きな影響を与えることが確認されました。
これは、とても驚くべきことです。
体内にある微小な細菌が出来ることといえば、「病気」など宿主の身体の機能不全への影響くらいしか想定されていませんでした。
それが事もあろうに、「誕生前に生殺与奪の選別」を行ったり、染色体の働きを超えて「性転換」までさせてしまう関与を行うのですから。
しかし・・・ 実は「関与する」だけではなかったのです。
3 遺伝子融合
2002年、産業技術総合研究所の深津武馬博士らのグループは、小豆にわくアズキゾウムシという害虫のX染色体に、ボルバキアのゲノムの1/3が取り込まれていることを発見しました。
ボルバキアは母系遺伝因子として、メスの卵を媒介に次世代宿主に移動するばかりでなく、宿主のDNA自体に自分のDNAを融合させるという段階まで進んでいるのです。この記事では、対象商品を送料無料で提供します Face mask 製品を購入することも、オンラインで購入して、今日すぐに医療部門の店舗で受け取ることもできます
しかも・・・
その後の研究によれば、アズキゾウムシばかりでなく、カミキリムシ、ショウジョウバエ、アブラムシなど至るところで遺伝子融合を起こしていることが明らかとなりました。
ゲノムの改変・・・まさに“新たな生物への進化”を引き起こすトリガーの役割を果たしていたのです。
“突然変異は1個の遺伝子が変化して、ちょっとだけ機能が変わります。共生微生物が入ると、ごそっと遺伝子が入ってきて色々なことが大きく変わります。”
【産業技術総合研究所 深津武馬博士】
ゲノムの“転写ミス”によって引き起こされる突然変異・・・それが有意なものとなる可能性は大きなものではありますまい。
既に完成した生物種のゲノムの一部が融合するとなれば、種の進化に寄与できる確率は飛躍的に高まります。
ならば、共生微生物が宿主のDNAを改変するという現象は、このボルバキアだけが「最近」始めたことなのでしょうか?
また、「種の分化」はどのようなメカニズムで行われるのでしょう?
ある昆虫の体内で食物を消化する役割を果たしている共生微生物が、他の同様な機能を持つ微生物と入れ替わってしまう現象が知られています。
そして、その微生物が新たな食物を消化する能力を持っていた場合、宿主の昆虫がこれまでとは別の食物を食べ始めるのです。
※これはアブラムシで実験的に確認されています。
食べ物が変われば、その宿主が成虫になる時期も変化します。
成長段階の異なる二つの集団が出会っても交尾することが困難になるでしょう。
そうした状態が長期にわたれば、それぞれの集団に独立した突然変異が積み重なり、遂には『種の分化』が起こります。
※実際、北米の寄生蜂やショウジョウバエは、そのようにして分化したと考えられています。
共生する微生物の種類によって宿主の進化が左右されるのです。
共生微生物が進化に関与できるのは、別にボルバキアに限った話ではないのです。
とすると・・・
おそらく地球の長い生物史の中で、宿主と共生微生物の遺伝子融合はおびただしい回数が行われ、そうした中で有意な融合が自然選択の洗礼を受け、生き残ってきたのではないでしょうか。
もちろん同時に、DNAの転写ミスによる部分的な個体変異もあったに違いありません。
そうであったにしても、どちらが「主たる要因」は明らかでありましょう。
生命に進化をもたらしたのは“共生微生物”。
そうした観点から『進化論』を見直す時期がきているのかも知れません。
http://www5f.biglobe.ne.jp