ロナ
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<絵本や昔話のメッセージを紐解く②>
.~かわいそうなぞう~
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作/土家 由岐雄
絵/武部 本一郎
発行所/金の星社
<ストーリー>
桜の花びらが舞う上野動物園では、ゾウが芸を見せて大勢の見物人を喜ばせている。そこから少し離れた場所には、動物たちのお墓がひっそりと建っている。ある日、動物園の人が悲しいゾウの話をしてくれた。
第二次世界大戦がだんだん激しくなり、上野の動物園にいる猛獣は殺されることになった。ライオンもトラもヒョウも熊も大蛇も。そして3頭のゾウも。ゾウは毒の入った餌を食べず、注射も針が折れてしまい、とうとう餓死させることに。
どんどんやせ細っていくゾウは、餌をもらうために必死に芸を見せる。
しかし、1頭、また1頭と餓死していった。その上空には、今日も爆撃機が飛んできていた。
「戦争をやめろ、やめてくれ!」
動物園の人々は、ゾウの体に抱きついたまま、叫ぶのだった。
この物語は1951年に童話集に収められて発表されました。そして絵本になったのが、1970年です。
この本を子どもへの読み聞かせに選ぶときは、本当に迷います。朝の読み聞かせで、「今日も楽しい1日を」という気分にはさせられないからです。そして読む私自身も、この本の叫びに心が震えてしまうので、最後まで平静な気持ちで読み終えるためには、たっぷり練習する必要があるからです。
さて、ご存知の方もたくさんいると思いますが、この物語は実話をもとに作られています。実話をもとにという言い方をしたのは、いろいろと細かい部分に関して実際とは違うらしいからです。しかし、この本に込められたメッセージを思えば、細かい部分が実際とは違うことなど、取るに足らないことだと思います。
この絵本に書かれたゾウのように、殺された動物園の動物たちはたくさんいますが、殺さなくても餓死した動物がたくさんいたそうです。そして、鳥たちは、いち早く他の動物の餌として殺されたそうです。
内紛やテロ。自分の国を守るため、それから宗教的・民族的な問題など、地球上には戦争のきっかけとなるものはいろいろあります。最近の日本でも、安易に戦争を口にする人が増えたように思います。だからこそ、私はこの絵本を取り上げました。戦争では何も解決しないのです。この絵本のように、思いもよらない命にさえ影響を与えるのです。そして何より、戦争は関係する国や人々全員に深い傷・カルマを残します。スピリチュアル的な事実を知れば知るほど、カルマの深さを感じます。もう半世紀以上経っているにもかかわらず、私たち日本人は、第二次世界大戦の深い傷とカルマを抱えたままなのです。
グローバルになればなるほど、国と国の外交は難しくなっていきますが、どんな国が相手であろうと、戦争を解決策としてはいけません。私たち国民は、そのような決断を下そうとする政府には、断固として反対の意思を訴え続けなければいけないのです。決して許してはいけないのです。
それが、この本の主張です。存在意義です。悲惨な過去を悲しんでいる本ではありません。未来に対して、何があっても戦争をしてはいけないのだ!と、叫び続けている本なのです。
この本を、子どもだけでなく、たくさんの大人に読み伝えていくことが、私の重要な活動の1つだと確信しています。
記事ご提供:ロナの小部屋