ロナ
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<絵本や昔話のメッセージを紐解く③>
.~雪 女~
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雪 女
~『怪談』小泉八雲怪奇短編集~
再話/小泉八雲
訳/平井呈一
発行所/偕成社
<ストーリー>
木こりの茂作と弟子の巳之吉は、ひどい吹雪にあい、何とか川の渡し場のところまで来たが、船頭は向こう岸に船を泊めたまま姿がなかった。寒さをしのぐために渡し守の小屋に休む二人。そこに雪女が現れる。茂作は死に、巳之吉は他言しない事をきつく言われて、死を免れるのだった。
その1年後、巳之吉は「お雪」という江戸へ向かう途中の娘と知り合い、「お雪」はそのまま巳之吉の嫁になった。働き者で、子どもを10人生んでも、いつまでも美しいお雪。
ある日、巳之吉は針仕事をしているお雪をつくづくと見ながら、雪女とのことを話してしまうのだった。
「それはわたしじゃ!」
お雪は急に巳之吉に詰め寄り、そう叫んだ。そして、本当なら命を取るのだが、寝ている子どもたちのことを思えばそれはできない。どうか大事に育ててくれと叫びながら、その姿は白い霧となり、引き窓から出て行ってしまった。
それきり、お雪の姿は二度と見ることはなかった。
「雪女」といえば、やはり小泉八雲のものが一番有名でしょう。ウィキペディアで調べたところ、八雲にこの話を教えたのは、今の東京都青梅市出身のものだということです。「雪女」の伝承はさまざまな土地で、さまざまなパターンで語り継がれていますが、美しい女性というところが共通点としてあげられます。そしてその存在は、室町時代には認識されていたということです。
子どもの頃、この雪女を読んで「なんて理不尽な話なんだろう」と思いました。その理由は、毎日まじめに働いてきた年寄りの茂作が、理由も告げられず殺されてしまうからです。
私は、まじめに一生懸命頑張れば、幸せになれると信じていました。
それなのに、茂作は氷の息をかけられて凍死です。こんな理不尽な話は無いと、本当に思いました。
私は小さい頃、まじめに一生懸命頑張らないとひどい目に遭うよと言われて育ちました。ですから、毎日まじめに山へ木こりの仕事をしに行く茂作は、どうして殺されてしまうのか、納得できなかったのです。
それでは、今の私はどう感じているのか。
自然の多い場所には妖精やエルフなどさまざまな精霊がいます。その精霊たちは自然を守るためにいます。
イルカさんとの箱根でのワークのとき、瞑想中にチェーンソーで木を切る音が聞こえてきました。その場所は、森を守るために丁寧に管理されている場所でしたが、そのチェーンソーの音を聞いたとき、どのような理由であれ、自然を守る精霊たちは人の手が入る事がいやなのだと感じました。人間は、勝手に入ってきて自然を壊す存在なのです。
その思いで雪女を読んでみると、人間の世界ではまじめな働き者の木こりでも、自然界から見れば、山を汚したり破壊する悪人なのです。だから、雪女にしてみれば殺して当然だったのです。
昔の日本人は、自然とともに生きていました。自然や動物そのものに神性を感じ、敬う対象としていました。自分を守り育んでくれる存在であるとともに、一瞬にして命を奪っていく恐ろしい存在でもあったのです。
物質的豊かさが幸せのバロメーターとなっている現在の日本では、自然に対して神性を感じるのではなく、どれだけお客を呼べて儲けられるかを考えてしまいます。そのために、自然の豊かな場所にさえ利便性を持ち込んでしまうのです。
自然の力を借りる事で、私たちは心の調和を得られます。私たちは自然の一部です。美しい自然には愛が溢れています。限りない愛を与えてくれる自然に、私たちも愛を送り続けたいと思います。
記事ご提供:ロナの小部屋